職場
インタビュー

親戚が瀬戸内海の離島で歯科医院を開業していました。その手伝いを通じて高齢の方々と触れあい、例えば一人暮らしの方、身体や生活に不安を抱えている方に対して、「私が何かできることはないか」と考えるようになったんです。医院に来ることを楽しみにしてくれている、ここで私と話をしているうちに笑顔になってくれている、そんなことを肌で感じ、「高齢者の心を元気にする仕事がしたい！」と強く思うようになっていきました。ちょうど介護保険制度がスタートする頃でした。実務経験を積むべく、歯科医院を退職し、総合病院で看護助手の仕事に就きながら、通信制で介護福祉士資格取得を目指しました。私の今に続く介護の道がスタートしました。

総合病院を退職した後、介護職として、特別養護老人ホーム、有料老人ホームでの業務を経験しました。そこで亡くなられる方を何人も見送りながら感じていたのは、「高齢者が、病気になって入院したり、在宅生活を諦めて施設へ入ってしまったりする前の、もしかしたらほんの一時かもしれない貴重な時間を、もっともっと充実させてあげたい」ということ。そして、その想いを形にするため、今のデイサービスを始めることにしたんです。もちろん、「うちの母を見てほしい、場所はここを使ってください」と一軒家を貸してくださる方がいたからこそ叶えられた夢なのですが。私も含め、スタッフ全員が初めての挑戦だったので、最初は大変でした。場所を提供してくださった方のお母さまをケアするため、泊りもありました。それでも、思いを一つにする頼もしいスタッフたちがそこにいてくれたので、ご利用者と一緒に楽しく過ごせるデイサービスの仕事は、とても充実していました。

少しずつ定員を増やしていき、現在は１５人のご利用者に対し５～６名のスタッフを配置した、ゆとりあるデイサービスとなっています。最初にお借りしたお家から、少し広い古民家へと移転もしました。今は、庭で家庭菜園もできます。スタッフに恵まれていることが、当事業所がご利用者やご家族に選んでいただけている一番の理由でしょうか。「いい職員さんばかりですね」という嬉しい言葉をよく頂戴します。介護職、看護職、それぞれが互いの専門性を認め合いながら助け合っているのは素晴らしいことですよね。スタッフが雰囲気良く働いていることで、ご利用者やご家族も安心してくださっているのではないでしょうか。ちなみに当事業所には「手芸がプロ並み」というスタッフが２名いて、活発に創作活動を進めているため、「手芸ができるならば行きたい」というご利用者をご紹介いただくことも少なくありません。『昔とった杵柄』『九十の手習い』で、熱心にパッチワークや編み物に取り組まれているご利用者が大勢いらっしゃいますよ。

目標はただ一つ。この事業所を長く続けていくことです。この先大きく変えようとは思っていません。小規模でゆったりとしたこの空気感そのままに、ご利用者がもっと楽しく、もっとイキイキと過ごせるお手伝いを、スタッフたちと共に続けていきたいと思っています。全てのご利用者が「ここに来たい」と思える場所でありたい。ご利用者のやりたいこと、ご利用者にしてさしあげたいことを実現できる場所でありたいと考えています。例えば、ご利用者の誕生日にはお一人ずつ心を込めて手づくりしたケーキでお祝いしたり、庭にテーブルを並べてみんなで芋煮鍋を突っついたり、突然テーブルの上でたくさんの活き車海老が跳びはねたりと、ご利用者もスタッフも楽しめるイベントも盛りだくさん。小規模デイサービスならでは、ですよね。これからも、ご利用者の気持ちを思い、共に働く仲間たちのことを思い、家族のように支え合える事業所であり続けたいと思っています。