職場
インタビュー

大学4年の時、ゼミに集まっていた友人たちが医療ソーシャルワーカーを目指していました。だから「自分もそうしようかな」くらいの気持ちで資格取得に向けた勉強を始めたんです。でも当時、総合病院で働く医療ソーシャルワーカーの就職はすごい倍率で。結局、私が内定をもらったのは精神科。診療科として未知の世界だったので悩みましたが、働きながら学んで、精神保健福祉士の資格を取ろうと決めました。いざ現場に出てみると、様々な症状や悩みを持つ患者様と向き合って、より快適に生活していくための相談に乗るのが、とてもやりがいに感じました。しんどい生い立ちやどうにもならない状況を伺って、私自身も苦しくなる時がありますが、喜びを共有できた時には、とてつもなく嬉しいのです。患者様の人生に関わりながら、自分も成長できる、それが、今もこの仕事を離れていない理由です。

「2年前も同じように入院した」という患者様がいました。年金から家賃と光熱費を支払うと、1日1食のおかゆしか食べられない、という困窮した毎日を一人きりで過ごしていたおばあさんです。自分を傷つけ、そのための治療で入院されたのですが「繰り返す」ことの原因を解消しなければ、体の傷が治っても、またしばらくして、入院されてしまうのではないかと思いました。「家族に迷惑がかかるから」と誰とも連絡を取らず一人で引きこもっていたおばあさんに何とか説明をして、生活保護の申請とご家族へ連絡することをご納得いただきました。傷が癒え、退院した現在は、介護保険を利用してデイサービスに通われています。私たちは、ドクターの治療だけでは治せない心の傷、孤立した生活などを、どうにか少しでも改善できる環境を整えられるよう、あらゆる側面からの支援に取り組んでいます。

私は主に地域連携室でアセスメント業務に携わっています。初診の患者様に対応し、緊急性を確認。その上で、院内と調整しながら診察や入院の受け入れを判断します。既に、当院以外の福祉事業所などから支援を受けている方の場合は、それら関係機関と病院の窓口にもなります。例えば、ヘルパーさんが知りたいと思っている患者様の症状をドクターに聞いたり、患者様が社会復帰を望まれていれば就労先の検討もします。採用面接時に同席することもあるのですが、患者様が一生懸命仕事へのやる気を語ったり、企業側が快く受け入れてくれた時は心の底から「良かった」と思います。「無理かもしれない」でも「きっとできる」と患者様を信じて様々な支援を考えるので、その気持ちが報われた時は本当に嬉しい、感動ですよ。

院内ではしっかり若手を育成するという課題があります。ここで働いていると、患者様は、児童から高齢者まで幅広い年代で、病状も、発達障害、依存症、医療観察法の対象者など様々なケースが集まりますので、すごく勉強になると思います。新人の方、若手スタッフがアセスメント力を向上させられるよう、わかりやすく指導していきたいですね。また今後は、地域の中で精神保健福祉への意識が高まるように、院外でも、精神病への理解を含んだ事業プログラムに協力したり、一般の方にも参加していただける、心理教育やSSTを取り入れたプログラムの実施に関わっていきたいと考えています。患者様やそのご家族が、もっと元気になれる環境を作りたい、そういう地域のサポートにずっと携わっていたいと思います。