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はたらきたい 未来への一歩

あなたにとってはたらくとは、どんなことですか?

岡山県のとある老人保健施設。

ここで日々、利用者様へのリハビリやケアにあたっている一人の介護福祉士がいます。
彼女は、ルミさん(39歳)。
彼女の元気な声、大きな笑顔で、リハビリルームはいつも明るく華やいでいます。
今日はこれから5人の利用者様に、部屋の端っこにあるテーブルに集まってもらい、それぞれの脳に活性化を促す脳トレーニングをやってもらうそうです。
ルミさんは手際よくプリントや色とりどりのマグネット、ひらがなの書かれたキューブなど必要な備品を机の上にきちんと並べ、利用者様一人ひとりに声を掛けはじめました。
「こっち来てよ~」
「今日はこれやってなぁ」
「ここ、座れるかなぁ、座れた?」
利用者様の準備を手伝うルミさん。
優しく手を伸ばし、利用者様の座っている場所や備品の位置を、丁寧に指を添えて確認しています。

じつは、彼女の目は見えていません。
ルミさんは全盲の介護福祉士なのです。
広いリハビリルームの中でごく自然に歩き、楽しそうに仕事をする姿に、
「目が見えないとは、言われるまで気づかなかった」という利用者様もいるそうです。

病気

ルミさんが全盲となったのは19歳のときだったそうです。
出産で母子共に危険な状態の中、1700gという小さな体で生まれ、未熟児網膜症を患いました。
何度も手術を重ね、視力が回復した時期もありましたが、8歳で診断された緑内障は、主治医が言っていた通り徐々に進行し、専門学校在学中だった彼女の視力を完全に奪いました。

「将来は何になりたい?」という質問の答えはいつも「看護師さん!」。
ルミさんの叔母さんは看護師でした。
師長として患者様のために頑張るその姿に幼い頃から憧れ、ずっと
「私も誰かを助けるような仕事がしたい!」と、思っていたそうです。
思春期を迎え、将来の自分をリアルに思い描く頃には「人に喜んでもらえる仕事をすることで、これまで私を助けてくれたたくさんの人への恩返しがしたい」という強い気持ちが募っていました。
しかし、盲学校から専門学校へ進学する中で、看護師を目指す道はありませんでした。
「夢は叶わない」という現実を受け入れなければなりませんでした。

現実

盲学校の先生に「どうしても医療に関わりたい」と相談し、鍼灸マッサージ師となる道を選択。
ところが、専門学校へ進み、しばらくして緑内障の進行による長い入院生活を余儀なくされます。
同級生との差はどんどん開き、単位が足りず進級できなくなりました。
完全に視力を失い、心は折れかけ、「早く就職して、恩返しがしたい」という気持ちは、焦りに変わり、ルミさんを追い詰めました。
当時は、思うように進路を歩めない自分に腹立ち、何もかもが嫌になっていたそうです。
そして、とうとう不安定な状態から脱せず、生きる気力を失ったルミさんは、病院の屋上に…。
本当に「もう、飛び降りよう」と考えていたとき、屋上に駆けつけ、それを思いとどまらせてくれたのは、主治医の先生でした。
8歳の緑内障の診断時から、ずっと病状を見守ってくれていた先生です。
それは、元気のないルミさんを心配し、不安を感じていた主治医が、休日にも関わらず、様子を見に来ていた日の出来事でした。

ルミさんは、主治医と屋上で何時間も話をしました。
「ルミちゃんには、顔一面で笑う大きな笑顔がある。目が見えなくて何もできないなんて思わないで。ルミちゃんのひまわりのような笑顔は、まわりの人を元気にできる宝物。両親からもらった宝物を大事にしなさい。」
これはいつもルミさんの心の中にある言葉。
ルミさんを救ってくれた主治医からの大切な大切な言葉です。
「私のできることを頑張ろう」ルミさんは、そう心に決めました。

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